ルキが消されてしまった全ての記憶を思い出したとき。
なにもかもを放りだして、その大切な人のもとへ行ってしまうんじゃないか。
私がルキを呼んでも振り返ることもなく、大切な人を抱きしめるんじゃないかって。
そしてそのルキの大切な人は、ルキのことを私が知らない本当の名前で呼びながら、再会できた喜びを噛みしめるんだ。
私なんか、まるで視界の片隅にも入れない。
そうやってルキは、私が知っているルキでなくなってしまうのだ。
「でも……メイベルのことも大切な人だっていってくれたんでしょ?それならきっとまた、会いに来てくれるよ」
離れ離れになるような結果になってしまったとしても、ルキくんはメイベルを忘れたりなんかしないよ。
そんなエイミーの優しい声が涙を誘う。
「だから私は、ルキと一緒に過ごせる時間を大切にしたいの」
「うん、うん…。だから今夜もルキくんに会いに行くんだもんね?」
「ごめんね、エイミー。協力してくれてありがとう…」
「メイベルのためだったら、居残り掃除くらいぜんぜんやるよ」
だから、私のことは気にせずルキくんに会いに行きなよ。
エイミーに力強く背中を叩かれ、ノートを開いたままの勉強机に顔を伏せて泣いた。


