「話せる魔獣ってなに?そんなものがこの世に存在するの⁉」
「レックスさん自身から聞いたことだし、校長先生からも聞いたの」
「話せる魔獣なんてつくれるの⁉ねぇ、なんのために⁉なんのために、ルキくんの記憶が消されたの⁉」
興奮気味のエイミーに「それは私もわからない」と首を横に振った。
ルキは私と出会う前、森で目を覚まししばらくの間彷徨っていたと教えてくれた。
ということは、ルキはこの森に潜む魔獣に襲われたのかもしれない。
だけどどんな魔獣に襲われたのか、なぜこの森で何を理由に襲われたのか、そんな肝心な部分さえも忘れてしまっているからこれ以上のことは何もわからない。
もしかしたらルキは、この森で見てはいけないものを見てしまったから記憶を消されてしまったとかそんな理由だろうか?
校長先生は龍は優しい魔獣だと言っていたけど、この10年の間で悪い魔獣に変わってしまったということもあるかもしれない。
私がそんな憶測を話すと、エイミーは「ルキくんがこの森で何をしていたのか、どんな魔獣に会ったのかを思い出してくれればいいのにね」と大きく息をついた。
「そうなんだけどね…。でも、このままルキが何も思い出さなければいいのにって思ってしまう私がいるの…」
「それはどうして……?」
エイミーが優しい口調で問いかけてきた。
「ルキが……遠くに行ってしまうような気がするから。大切な人がいるって言っていたの。時計台の前の湖のほとりで、その大切な人と一緒に過ごした記憶を思い出したんだって」


