「もう……ため息ばっかり多すぎだよ、メイベル。だからさぁ、もう寮を抜け出すのはやめなってば」



今日は1日中ため息ばっかりだった私は、学校が終わり寮に帰ってからもやっぱりため息が止まらなかった。

今日習ったばかりの魔法の授業の『一時的に魔力が上がるタイミングについて』を予習しておこうと教科書を開いても、すぐにライザのイジワルな笑みを思い出してしまってまったく手につかない。



「そのつもりだったんだけど……やっぱりルキとふたりでゆっくり話せる時間を無駄にしたくなくて…」

「はぁ。もう、ライザにチクられたって私は庇わないからね?」

「うぅ……。それだよなぁ、それが本当に怖いんだよね…」



今夜寮を抜け出すことをライザに知られてしまった以上、先生に告げ口される危険があるから中止すべきだって思ってはいたんだけど。

魔法も上手くて誰に対しても優しいルキは人気者だから、いつ見てもクラスメートに囲まれていて話す機会も少なくて。

私としたことがついつい、ルキとふたりで話す機会が欲しいばかりに、寮を抜け出して会うことはやめようだなんて言えなかった。



「ライザが黙っててくれると思う?せいぜい、メイベルが今夜寮を抜け出す計画を立てているようですよってチクるか、それかメイベルが寮を抜け出した瞬間をカメラに収めてそれを先生に見せるか、のどっちかしかないでしょ?」

「……どっちみち私はカサエル先生とサマラさんに叱られるってことだね」

「あと、寮を抜け出した罰として居残り掃除を1ヶ月くらいさせられるだろうね」