ジェニファーさんはカップラーメンの容器を机の端に寄せ、「じゃあハンサムくん、さっそくはじめるよ」そう言いながら立ちあがり、右手をルキの頭の上に置いた。
「お願いします」
ルキが真剣な眼差しをジェニファーさんに向けると、ジェニファーさんもまた真剣な眼差しを返す。
緊迫感が張り詰める。
ジェニファーさんが目を閉じると、ジェニファーさんの魔力がどんどん膨れあがっていくのがわかった。
カタカタ、と机が小刻みに揺れる。
それに共鳴しているかのように、私のぎゅっと握られた拳も震えはじめた。
これからルキの過去が知れると思うと緊張してきた。
早く知りたいようで、やっぱり知りたくないような、複雑な気持ちだった。
だってルキが記憶を取り戻せたなら、きっと私たちはお別れをしなきゃいけなくなる。
ルキはルキの住んでいた場所で、大切な人が待つ場所に戻るんだ。
そんなことが脳裏を過ぎってしまって、気になる反面知りたくないと思ってしまう私もいた。
複雑な気持ちを拭えないまま、すぐ隣からジェニファーさんに「何かわかりましたか?」と問いかけてみる。
するとジェニファーさんは目を閉じ、眉間に深いシワを刻んだまま首を捻った。
「……おかしいねぇ」
「おかしいって……?どういうことですか?」
ジェニファーさんはルキの頭に手を置いたまま私を向くと、ゆっくりと目を開いた。
ジェニファーさんのライトブラウンな瞳は、まるで鮮血のように真っ赤にかわっていた。


