へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする



ジェニファーさんが用意してくれた黒い丸イスに、ルキと並んで腰をおろした。

ジェニファーさんは向かいから私とルキを交互に見比べるなり、「それにしてもメイベル…あんた、いつの間に彼氏なんて出来たの?」とニヤニヤしながら聞いてきた。



「ちっ…違いますからっ!」

「あっははは、顔が熟したトマトみたい!」



ジェニファーさんは相変わらずイジワルで、会うたびに何かとからかうようなことを言ってくる。

今からちょうど1ヶ月ほど前にも、占い館の前で会話をしたのだけれど、そのときは「まだ彼氏できないの?」とかって笑われた。



「もうっ‼そんなことよりも相談にのってくださいよぉっ!すっごく真剣なお話しなんですからねっ!」

ね、ルキ?とばかりに左隣へ顔を向けると、ルキは私と目を合わせたあとジェニファーさんに向き直り、「お願いします」と頭を下げた。



「はいはい、わかったよ。で?なによ?」



カップラーメンの汁を喉を鳴らして飲んでいるジェニファーさんに、ルキが記憶喪失だということを話した。

魔法をつかって未来を見ることができるジェニファーさんなら、過去を見ることもできるのではないかとも話した。



「ふんふん……なるほどねぇ。まぁ、過去を見ることも出来ないことはないよ」

「本当ですかっ⁉」



黒い丸テーブルにバシンと手をつき、立ち上がった私を見上げたジェニファーさんは頷いた。



「ああ。ただし、私は過去を見るなんて商売はやってないからね。特別料金として倍の5万円をもらうよ」