へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする



窓のない真っ黒な外観が怪しい、占い館の銀色の鉄製のドアの前にはずらりと20人くらいの行列ができている。



とりあえず20人の行列の最後尾に並んでみたけれど、付近の立て札は『只今の待ち時間、4時間半』となっている。



「もう13時だし……さすがに4時間半も待てないなぁ。18時の門限に間にあわないよ」

「そうだね。それなら今回は諦めるしかないか」

「待って、ルキ。相談するだけでもしてみよう」



占い館にはもう何度も遊びにきたことがあって、ジェニファーさんと私はすっかり仲良しだから。

きっと話しくらいは聞いてくれる。



鉄製のドアには『只今お昼休憩中』との張り紙がされているけれど、20人の行列の間を縫い、その重厚な扉をそっと押し開けてみた。



「ちょっとちょっとお客さん。今はお昼休憩中だって書いてあるのがわからないのかい?勝手に開けないでもらいたいね」



ほんの少し開いた扉から見えたのは、8畳ほどの広さがある部屋の真ん中のテーブルで、カップラーメンをすするジェニファーさんの姿だった。



「休憩中ごめんなさい、ジェニファーさん。ちょっとご相談があって……」

「相談?あぁ、なんだ。誰かと思えばまたあんたか。どうしたんだい?また魔法が上手く使えるようになるコツでも聞きにきたのかい?」



すると私の後ろからルキがひょっこり顔をだしてきて「有能な魔法つかいであるあなたに、お願いしたいことがありまして」と天使のような笑顔でニッコリと笑った。



ジェニファーさんは「おっ、今日はイケメンと一緒だったのかい」そう言って目を輝かせながら「まぁ話しくらいは聞いてあげるよ」とラーメンをすすりながら手招きをしてくれた。