食べ終えた私たちは会計を済まして店を出た。私もハルも帰宅部のくせにバイトはしていない。外食が高いのも知っているけど、この世界には学割値引きというものが存在するため、ありがたく利用させてもらった。だから私たちは何だかんだで安上がり生活を送る事が出来ていたというわけ。
「あー食った食った」
と、子供みたいに笑うハルが惜しくも可愛い。大きく伸びをしたハルは、私の手を自然に握った。
「たまには手繋いどく?」
照れくさそうに笑うハルを見て、私も思わず照れてしまった。くすぐったいような、付き合いはじめのような初々しい気持ちに久し振りに浸ってなんだか嬉しかった。
けれどハルの家に向かおうとする足取りは重さを感じ始めた。
ハルの家は線路沿いに佇む一軒家で、家にはいつも誰もいなかった。
ハルの父親はハルが産まれてすぐ事故で他界してしまったらしく、母親が父親の代わりに毎日遅くまで働いている。母親は昼間に近所のパン屋で働き、夜間に製紙工場でパートをするという二重生活を送っていた。
そのため私はハルのお母さんに一度も会った事がない。
しかし、ハルがまっすぐ家に帰れば、昼間の仕事を終え、洗濯やら掃除をして夜間の仕事に向かう母親と鉢合わせする事もあるらしい。
それでもハルは毎日夕飯は一人で食べるし、朝起きても夜寝るときも側には誰もいる事がなかった。
ハルはいつも一人ぼっちだった。

