好きな人のはなし


 昇降口で靴を履き替えている時、

 「メシ食ってから帰ろうぜ」

 ハルはお腹をさすりながら言った。

 「うん、私も減った」

 私たちは学校から2つ先の信号を曲がった先にあるファミレスに寄った。店内には同じ学校の生徒が何人かいて、私たちはいつも座る窓際のテーブル席に座った。しばらくするとウエイトレスの女の人が水の入ったグラスを2つ運んできて、

 「お決まりになりましたらボタンでお呼びください」

 と、静かにグラスを置いて去って行った。ハルはメニューを広げて一通り見渡すと、

 「琥珀は…いつもパスタだっけ?」

 と、私にメニューを見せる事なく呟く。

 「え?あぁ、うん」

 咄嗟に出た言葉だったけど、私には何も聞かずに決めちゃうんだ、私だってたまには…と思いかけたところで

 「いやでも、たまにはハンバーグとか食おうぜ?」

 と、ハルは私の目を見ながら言うもんだから驚いた。

 結局私たちはハンバーグを2つ頼んだ。

 私の気持ちを察したのか、いつもパスタしか食べない私を牽制したのか分からないけれど、"いつも"とは違うなと心の中で思った。