⑨「んー、何飲もう」

 自販機と格闘することやや30秒。

 たまにはメロンソーダでもいいなと思いボタンを押した。

 ガタンと音を立て缶のメロンソーダが落ちてきた。

 そしてプルタブを開け一口飲んだ。

 「美味すぎ」

 この瞬間が幸せなのよ。



 「こら、授業中だろ!」

 やば…!バレてしまった…

 恐る恐る後ろを振り返る。

 けど、立っていたのは先生ではなくハルだった。

 ニヒヒとでも言っているかのように子供みたいに笑う。

 「もう!びっくりさせないでよね」

 ほんとに焦ったんだから!

 ごめんごめんと平謝りしつつ、

 「それ、俺も飲んでいい?」

 と、私の手から缶を取る。

 「…また怒らせちゃった?怒るとおっかねーからなぁ琥珀チャンは」

 出たよ、"琥珀チャン"呼び。

 上機嫌だといつもこれなんだからまったく。

「べっつに〜?そんな簡単に"琥珀チャン"は怒りませんよーだ」