「琥珀ー?次体育だよ」

 志帆が私の顔を覗いてきた。

 ハッと我に返り、気づくともう午後になっていた。

 5限目は体育。昼食のあとの体育は最悪だけど、そんなことは今の私にはどうでも良かった。
 
 私と志帆はジャージを持って教室を出た。
 
 「今日体育の池田先生が休みだから自由に体育館使っていいらしいよ」
 
 え…。って事は1組も一緒に使うって事じゃん。

 私達の学校では体育の授業は隣同士のクラスと一緒に行っていた。つまり、ハルや宏太も一緒の空間にいる事になる。

 気づけば体育館はいつの間にか賑やかになった。

 そりゃそうだ、年頃の高校生が騒ぐんだからみんな楽しみたいに決まってる。

 そんな中、私と志帆は体育館の端っこにいた。

 「志帆ー、バスケやろうよ〜」

 突然、1組の女の子二人が志帆に声をかけてきた。

 志帆はバスケ部だ。それに美人だし誰とでも仲良くなれるタイプだから女子からも人気があった。

 「あー、ごめん、今日はいいや」

 志帆は優しいからこういう時はよく私に気を使ってくれてる。

 「私そこらへんでテキトーに見てるから行ってきなよ」

 でも今日は何だか一人でいたい気分だった。
 
 そして志帆も申し訳ない顔をしながら、

 「ごめん、行ってくる!」

 と走って行った。

 そんな私は志帆に手を振って体育館を出た。

 さて、どこ行こうかな。こんな堂々とサボれる日はなかなか無い。

 とりあえず喉乾いたから自販機に行って、保健室で寝るか。

 私は頭の中でこの1時間の計画を立てて1回の渡り廊下にある自販機に向かった。