「何よそれ…それって自分が傷つかないようにこの状況から逃げるって事じゃん。結局宏太は自分が一番大事なんじゃん!」

 なんで宏太はいつもそんなに冷静でいられるのよ、私はこんなに必死なのに…!

 「はぁ…」

 私に聞こえるように大きなため息をつかれた。

 「俺さきに戻るわ」

 宏太は必死な私に目もくれず教室を去ろうとした。
 
 「彼女」

 私はポツリと口を開くと宏太の足が止まった。

 「宏太、彼女いるでしょ」

 そう…私は知っていた。

 「ピアス、脱衣所に落ちてたよ、女の子が付けるやつ。…なんか…ハルの気持ち分かっちゃうわ…」

 宏太はこっちを振り返り、私を睨んだ。

 「…お前のそういうところ、心底腐ってると思うよ」

 まるで嘲笑われているかのような目をされて私も思わず睨み返した。

 「お互い様じゃないの?そういうの同士って言うのよ」

 私は宏太を置いて走って教室に戻った。