「琥珀…」

 ハルの声は若干震えていた。その声がさらに胸を締め付けた。まさか、こんな形でバレるなんて思わなかった。バレないように気をつけていたのに。自分のツメの甘さに悔しくなる。一番傷つけたくなかったのに、ハルにはどうしても私の隣で笑っていてほしかった。だから、ごめんね、ハル。私にはこうするしかないから。

 私は顔を上げ、ハルを見つめる。

 「私、浮気なんかしてないよ」

 ハルの右目から涙がスっと落ちた。

 咄嗟に出た言葉じゃない。こう言うしかないと思った。ハルには私が必要だし私にもハルが必要だった。本当に好きだから。お願いだから、どうか、愛の嘘だと汲み取って。

 私はハルを強く抱きしめた。

 「…愛してる」

 ハルは何も言わなかった。ただ、抱きしめられている私の中で声を押し殺すようにして泣いた。