「私でよかったら聞くよ…?彼女なんだし」

 天井を黙って見つめているハルは、何かを耐えているように見てた。そして同時に、私の心臓もドキドキと音を立ててその時を待っているようだった。

 「…そうだよな、彼女だしな、琥珀」

 ハルは切ない顔のまま、私を見る。その瞬間、さらに心拍数が上がった。

 「お前さ、浮気してるだろ」

 頭の中は一気に真っ白になった。"なんで"、"どうして"、この2つのワードが私の周りをぐるぐる囲んでいく。そしてじんわりと変な汗をかきはじめた。シンとした部屋の中に私の少しづつ荒くなる息づかいの音だけが響く。

 「…ちょっと、何バカなこと言ってんの。そんなわけないじゃん」

 やっと口が開いた。ニコッと無理にでも笑わないと悟られてしまう。

 「あったじゃん」

 私はつい起き上がった。そしてハルはあたしを見上げ、切なく笑った。

 「嘘なんか…つかなくていい」

 「違うって言ってるじゃん」

 「ふざけんな!今年に入ってからお前ケータイ見る回数多くなって、俺といる時も口数も減って、こうやって俺の家から帰る時も化粧直したりしてさ…」 

 ハルはそう言いながら起き上がり、私を抱きしめる。

 「気づかないわけないだろ…俺はお前の事ずっと見てきたんだぞ…なぁ琥珀…頼むから正直に言ってくれ…」

 私は深く俯き、抱きしめたハルの手を静かにどけた。