まさか本当に走ると思わなかった私の足はハルの家に着いた頃にはガクガクだった。けれどハルはそんなのお構いなしに私の手を引っ張って、家に連れ込んだ。

 ハルの部屋の扉を勢い良く開け、私をベッドに押し倒す。

 「んんっ…まって…ハル…っ!」

 ハルは私の口を塞ぐように、熱いキスをした。溶けそうなくらい熱いキス。ハルは自分のワイシャツとTシャツを脱ぎ上裸になったところで、私のブラウスと下着を慣れた手つきで剥ぎ取っていく。

 「琥珀、好きだ」

 その顔、その声、真剣そのものだって伝わってくる。そして、強く、優しくハルは私を抱いた。
 
 気付けば私たちは眠っていた。寝ているハルの顔は本当に可愛らしい。相変わらず二重の線が綺麗。私は指で思わずその線をなぞった。

 「ハル可愛い」

 心の呟きだったのに思わず声に出てしまった。その声に反応したのか、ハルはうっすらと目を開ける。

 私はハルの髪をそっと撫でた。そしてハルは優しく微笑んで私の手を握った。
 
 突然胸がゅっと苦しくなった。心臓を力を込めて握られたような…。今まで感じたことない痛み。

 「ハル」

 痛みを紛らわそうとして私の口が勝手に喋った。

 「ん?」

 ハルは優しく笑いながら応える。

 「最近何かあったの?」

 ハルは目を少し見開いて、今度はあからさまな作り笑いをした。

 「何かって?」

 そんなハルの笑顔から思わず目をそむける。

 「…今日ね、ハルのクラスの女の子が、最近のハルが元気ないって心配してたよ」

 何かを悟ったようにハルはさっきまで握っていた私の手を離して、天井を見つめた。