初夏だというのに朝晩は冷え込むが、やはり日中は日が照り、暑いのがしんどくなっていた。

 小学生や中学生の頃は生活のすべてがキラキラと輝いて見えていたのに、高校生になった途端、一気に気だるさを感じさせる日々に襲われた。

 放課後になっても暑さは軽減せず西日は容赦なく私を照らした。そして私はいつものように2年1組の廊下の前で彼を待つ。

 私の前を2人の女子が、「あそこのカフェのケーキ気になるよね」、「でも今お金ないからな」と、高校生らしい会話をしながら通り過ぎて行く姿を見て、私はケーキよりハンバーグが食べたいなぁと、空気の読めない事を考えてしまった。
 
 彼が教室から姿を現したのはそれから10分程してからだった。

 「琥珀ごめん、待った?」

 衣替えが終わりワイシャツにえんじ色のネクタイをゆるく結び、茶色の髪が西日に染まり赤茶っぽく見えた。
 
 彼の名前は佐竹ハル。ハルは去年の夏休み、大人数で夜遊びをした時に仲良くなった。仲良くなるといっても初めはメールのやり取りをしていたくらいで、隣のクラスなのに学校で会話する事なんてほとんどなかった。それでもお互いがなんとなく惹かれ合い、夏休み明けの文化祭でついに告白されたのだ。