そもそも私と宏太が出会ったのは、去年の冬だった。

 その日は雨が滝のように土砂降りで放課後になってもなかなか学校から出られなかった。

 「冬の雨って最悪だよねー」
 
 友達の志帆が自分の机で肘をつきながら呟いた。私たちは今日、傘を持ってきていない。天気予報なんて普段から見なかったけど、通り雨ならなおさら注意することなんて出来ない。

 「見なよあれ、傘さして歩いてるのは女子力高いお嬢様方か相合傘してるバカップルだけじゃん。真冬だってのにアツアツだね〜」

 窓から見える生徒たちの姿を志帆は気だるそうに眺める。けれど、哀れんでいたのは私達だけではない。教室に残っている生徒も少なくはないし、傘を忘れた人がほとんどだから、みんな帰る手段が無くて困り果てていただろう。

 志帆はバスケ部に所属していたけれど、ちょうどこの日はオフだった。だから教室にもバスケ部の人は何人かいて、ちょっと新鮮だった。