脱衣所で服を脱ごうとした時、片隅にピアスが落ちていることに気がついた。それはどうみたって女物のピアスだった。

 「なんだ、彼女いるんじゃん」

 そう思った瞬間、もやもやが胸の中でいっぱいになって、慌てて脱ぎかけの服を着直した。

 部屋に戻るとリビングの電気は消えていて、宏太はすでに寝ていた。宏太を起こさないようにそっと側に近寄る。私よりまつげが長い。疲れていたのだろう、スースーと寝息をたてて気持ち良さそうに寝ている。普段はクールで無口なのにちょっとした仕草に色気さえ感じる。鎖骨の下の小さなホクロは私しか知らないと思っていたのにな。

 私は荷物を持って部屋を出た。

 外の空気は初夏にしてはまだ涼しく、肌寒い。街が寝静まった夜、相変わらず星だけがやたらキラキラと光る。私はこの時、星ってこんなに輝いていたんだって初めて気づいたんだ。