「琥珀…お前なんで笑ってんの」
 
 突然上から降ってきた声で我に返った。

 「なんだ、上がってたの…気付かなかった」

 気づくと宏太は風呂から上がっていて、上裸姿で立っていた。濡れた髪をタオルで拭いている。

 私がベッドから起き上がると、隣に宏太が座ってきた。シャンプーのいい匂いがふわっと私を包んだ。

 「琥珀、今日はしないよ?俺疲れてるし、彼氏とヤッて直行してきた女としたくねーもん」

 平然とした顔で淡々と言われて、なぜかイラッときた。

 「私だってそんな体力ないよ」

 宏太はクスッと笑って私の頭をなでた。

 「お前今日は泊まってけよ、一緒に寝よ」

 彼氏みたいな事を言う宏太に胸がぎゅっと詰まりそうになった。この人に彼女がいたらきっとこうやって優しくする。けれど、私がハルと出会っていなくても、宏太と付き合う事は絶対にない。だってこの人は、ハルを好きな私が好きだから。

 「私もシャワー浴びてくる、貸してね」

 「うん、Tシャツはいつもの所にあるから」

 親に友達の家に泊まると連絡をしてから脱衣所に向かった。