『次は一位を目指して頑張れよ』
『もしかしたら理穂ちゃんのことが好きなんじゃないかなー』
『理穂ちゃんのよさは正確さだから、コンクール向きだし、大丈夫』
 
音楽がホールに反響している。
そう思いながら、私は急に観客席を意識し出した。

お父さん、お母さん……おじいちゃんたちもたぶん、見てる。
先生も来てくれると言っていた。
 
ちゃんと、身についた正しい音を出せている。
間違えてはいない。
もはや、目を閉じてでも間違えない自信がある。

でも……。

『こういう話、男友達にもしたことないのに、なぜか宇崎さんなら話せる』
 
だから、雑念はいらないのに……。