「分かりました。


明日にでも、そちらに伺います。


それと、その子とじっくり話をさせてもらえませんか?」






「ありがとう。



そうしてほしいのは山々なんだけど、その子は大人に聞く耳を持ったり、教師が深入りしてくる事が嫌いな子なんだ。



だから、ちゃんと話せるかどうかは正直分からないけど…。」







「それでも構いません。

明日からよろしくお願いします。」







「こちらこそ。」






先生の電話を切ってから、急いで親父がいる院長室へと向かった。





「失礼します。」





「おぉ、奏汰か。

どうした?」





「ちょっと話があって…。」






「そこ、座りなさい。」





俺は、親父と向き合う形で座った。






「実は、今日いっぱいでここを辞めようと考えてます。」






「え?」






「さっき、俺の恩師である人から電話が来たんだけど、その人今高校の校長先生やってるんだ。それで、その高校に心臓の病を患っている人がいるらしくて…。



校長先生は、その子に今の学校で3年間学んでほしいらしくて転校はさせたくないらしいんだ。その子に、何かあった時助けるために俺の力が必要なんだ。




だから、明日からその高校の保健室の先生として働こうと思って。」







「それは、奏汰本人の意思なのか?」






「はい。」






俺は、反射的に返事をしていた。




きっと、この話を断ったら一生後悔が残るような気がしていた。




「それなら、俺は何も言わない。



お前の担当だった患者は、俺が責任持って引き継ぐ。


きっと、患者さんも分かってくれるはず。



だから、奏汰。


分かってるとは思うけど、病気の生徒を任される責任は重いんだ。




その子のために、頑張るんだよ。」







「はい。」






親父に、頭を下げてから俺は院長室を後にした。