ずっと、考えていた。





私が産まれるまで立ち合ったのもその医者じゃなくて別の医者だった。





精子提供を提案した医者は、その方法が人権として問題があって、その医者は免許剥奪になったって聞いた。




その医者も医者で、体外受精に興味があったらしい。




私を助けた医者は、どうして私の命を守ったのか。




私には、人権なんてないはずなのに。








「愛ちゃん…。」






先生の表情は険しかった。






「愛ちゃん…


よく頑張ったな…。



よく頑張った…。」







どうしてだろう…。





先生の一言が、苦しそうに思えた。






でも、その言葉に私は救われたような気がした。





本当は、誰かにそう言ってもらいたかったのかもしれない。






認めてほしかったのかもしれない。





ずっとずっと、1人で寂しかったのかもしれない。






その頑張りを、誰かに分かってほしかったのかもしれない。






その寂しさを紛らわすために、お金欲しさを理由に男と寝ていた。







でも、本当は1番その言葉が聞きたかったことに気づいた。





私は、すごく単純なのかもしれない。







「愛ちゃん…。


ありがとう。


話してくれて、ありがとう。


ずっとずっと、苦しかったんだよな。


でもな、愛ちゃんは今1人の人間として生きているんだ。


愛ちゃんという存在は、1人しかいないかけがえの無い大切な存在なんだよ。


ちゃんとここで生きている。


それが、今伝わってくる。


泣いたり、苦しんだり迷ったり…。


それが、生きていることなんじゃないのか?


それが、人として生きているってことなんだよ。


生きたいっていう思いが、愛ちゃんもちゃんと持っていた。


だから、当時担当した医師は愛ちゃんを助けたんじゃないのかな。


愛ちゃんの命は、産まれてきた時から、




いや…




受精された時から始まっているんだよ。」






「城山先生…。」





再び、私は城山先生の温もりに包まれた。