ーside奏汰ー



愛ちゃんの、心の扉を開けるにはかなり時間がかかりそうだ。




決して、見せることのない愛ちゃんの笑顔。




いつも、君が見せるのは悲しく苦しそうな表情。





あるいは、無表情。






だけど、ほんのわずかに愛ちゃんは変わろうとしていような気がしていた。






もしそうなら、愛ちゃんに俺は何ができるのだろう。







「愛ちゃん…。


初めは、言ってる意味が分からなくてもいい。



無理に、分かろうとしなくてもいい。



でもね、愛ちゃん。



どんな産まれ方をしようと、幸せになったらだめな人間なんて、1人もいないんだよ。



どんな時だって、人は誰かのために産まれてくるんだから。




それが、何らかの形で分かる時がくる。




真に、生きている意味が分かる時がくる。」







自分でも、驚くほど愛ちゃんが苦しい表情をすればするほど、自分も苦しくなっていった。




心が熱くなり、涙が出そうになるのを何度もこらえていた。






こんな気持ち初めてで、自分の言葉にも驚いている。




人のために、こんなに熱心になれたのは初めてだった。




助けたい。




守りたい。




そして…




君と、一緒に幸せになりたい。




それが、俺の心をつき動かしているのかもしれない。





それから、愛ちゃんのことをもっともっと知りたくなった。






産まれてから今まで、どういう生き方をしてきたのか。






何が好きで、何が嫌いなのか。






愛ちゃんと、うち解け合えるまで時間がかかってもいい。






それでも、いつか分かり合いたい。