夏に近づくころ、私ははじめて琴原くんとお話した。
「光原さん、このプリントありがと」
光原、それが私の名字だ。
光原 彩音(みつはら あやね)。
これが、琴原くんとの初めてのお話。
「うんん、でも出すのおくれてごめん、ね」
「いいよいいよ。気にしないでよ」
やっぱり、琴原くんは優しいな。
この男の子のこと好きになれて良かったって思っちゃうよ。
彼が私のこと好きなわけないってことはわかってる。
彼は誰にでも優しいし、モテるもん。
こんなブスに、告白されても嬉しくないだろうし。
だから、私は瞳に映る彼を遠くから見るので充分なんだ。