「景色?」
男の割には高めの声。
この人が誰かも分からないのに。
真美の名前が出たからかな。
私達はいつも深く狭い付き合いしかしないから。
「さっきのナンパしてきた人達に掴まれて怖くて」
「うん」
「その時に見たんよ、商店街と駄菓子屋と雨が降ってるの」
その駄菓子屋のシャッターは閉まってたんやけどね、と続けて。
隣を見ると男の子は驚いた顔。
その顔を見て何故か私も驚いた。
「あの日、か」
「あの日?なに?」
「いやなんでもない!まじで!」
「嘘つき!ちょっと教えてよ!」
絶対あの日って言った!
聞こえたもん!
「私彼氏いるんやろ?!知ってるん?!」
「げっ!なんで知ってんの!」
「誰なんその人!ていうか君名前なんなん?!」
「ちょちょちょ、たんまたんま!」
もうすでに住宅街。
私の家も目と鼻の先。
そんなの関係ない。
今はすっごくチャンスなんやから!
って、思っていたのに。
「ごめん、これ以上言うと怒られるから」
「はい?」
「貴重な情報ありがとーっ、じゃあねーっ」
「えええええ?!」
まさかの。
逃げられました。
服を掴む間もなく。
それはそれは鮮やかに。
「ちょっとー!!!」
「また会おうねーっ」
こっちは走れないのに!
ひどすぎる!
.

