「どうぞ」と出せば無言でそれを受け取り、一気に飲んで「サンキュー」と流暢な英語で返してきた。


(ううっ、この人の発音も完璧だ…)


生粋の日本人だよね…と思いながらも劣等感が増す。
やっぱり早々に辞めようと思ってたら、彼の手が伸びてきた。



「何?」


お替りなのかと思えばそうじゃない。


「経費処理手伝ってやるよ。領収書持ってこい」


「へ?」


思わず間の抜けた声を出した。
これは私が一人でやる仕事なんだろうと思ってただけに、まさか上司の彼が手伝ってくれるとは思わず驚いてしまった。



「今吐いてたろ。誰か手伝ってくれって」


「そ、それは確かにそうだけど…」


だからって、外回りから戻って来た人に任せるなんてことは出来ないし、そもそも、この人にはこの人でやるべき仕事もあるだろうから、私のする仕事として任されてるものは、自分がやらないといけない気がするし……。



あれこれと思い悩んでたら彼が私の顔を見上げた。
ドキン…として両手で持ってたトレイを胸に抱え込む。