私はアイスティーの中にミルクだけを入れ、ストローでクルクルとかき混ぜた。


「明里さんは甘い物は苦手ですかな?」


小早川さんのお祖父ちゃんが私のすることを見てたらしい。問いかけてきたから、いえ…と首を横に振った。


「好きなんですけど、これが二杯目だから少し控えようかと思いまして」


二人が来る前に頼んだ一杯目には、ガムシロップを二個分入れて飲んだ。


「そうか、こちらがお待たせしてしまったからね」


申し訳なさそうにされ、いいえ、そんなことは…と恐縮してしまう。
私の向かい側にいる人はそんなことに興味なさげで、無言でコーヒーに口を付けた。



「ところで、現在はお仕事をされてないと聞いたんだが…」


「…あ、はい。丁度借りていたマンションの更新時期でもあったし、一度実家へ戻ろうかと思ったものですから……」


ドキン!と胸が弾んで言い訳を重ねる。
実際、実家へ戻ろうと決めたのは、更新時期とは全く関係もないんだ。


「そうなんですか。では、また何か仕事に就くつもりがおありだということてすかな?」