なのに、着くなり本当は知人の孫とのお見合いだと聞かされ、騙された〜〜!と嘆く間もなく、此処で待っとれ…と言われて置き去りにされたまま十分以上が経過。


追加オーダーもせずにいる私をウエイトレスがいい加減にしてよ…という目で睨み付けてくる。



(でも、悪いのは私じゃありませんから〜〜!)


そう胸の内で反論しながら、きゅっと膝の上に置いた手を握りしめた。

こんな肩身の狭い思いを一体いつまで続ければいいんだ。


(お願いだからお祖父ちゃん、早く戻って来て〜〜)


お願いだから…と、目線をテーブルの下に向ける。
帯締めのトンボ玉を見つめ、これも早く脱ぎたい…と思った。




「……すまんな、明里。待たせたの」


頭の上から祖父の声が聞こえ、やっと来た!と勢いよく顔を上げた。
半袖のシャツとグレーのズボンを履いた祖父を見定め、遅いよう…と泣き言を言おうとする唇を閉じる。

祖父の肩越しには二人の男性が立っていて、そのうちの一人が一瞬誰かに似てる様な気がした……。



「順平さん、こちらがお孫さんかい?」