墓所の前には、壊れ掛けた木戸が一つ。
壁は朽ち果ててしまったのか木戸以外は何もなく、その半分開けられた木戸から中の様子は窺えました。


「わぁ…」と声を発したきり、何も言えずに黙ってしまい……。


其処には整然と大きな灯籠が並び、その道の先には大きな一対の墓石が数基並んでいる。

木戸の側にある案内図からして、毛利家奇数代の藩主と奥方様の墓だと知り、足を一歩踏み入れると、まるで異世界のような静寂さが漂っていました。


こんな場所があるんだ…と感動すると共に、深い感銘を受けました。

木戸の前にいる自分が平民に思え、武家の力強さや勢力を感じ取りました。

あの先に見えるお墓の人達には到底近付けなかった頃の庶民のことを思い、この話は生まれたのです。