これまでと同じように…と囁く声を封じられる。
重なった唇の隙間からああ…と聞こえ、ぎゅっと腕を背中に回した。



ベッドルームに移ると彼はゆっくりと私を愛した。

身体中の全てに新しい跡を付けると言って聞かないのを、何とか見えない場所だけにして…と願うのが必死だった。


何度も頭が白く霞んで意識が飛んだ。
その度に名前を呼ばれて起こされ、彼の名前を呼び続けた。


好きとか愛してるとかいう言葉じゃなく、名前を呼び合うことで彼の気持ちを知った。


「明里の存在が大事だ。ずっと俺の側で生きろ」


命の有難さを知ってる人に出会って、私は新しく生きようと思えた。

お見合いの相手が、アノ声を知る人で良かったーー。



「一路さん……」


一つの路という字を思い浮かべて胸が狭まる。
日と月が一つの路を共に歩く日がまた来たんだ。



「明里」


名前を呼び返されて擽ったい気持ちに変わった。

朝見た田園風景を思い出して、胸がキュウン…と小さく鳴り響いたーーーー。