「ええっ!?」


別に興味湧くようなことは何もしてない。
益々、頭大丈夫?と訝しそうに顔を見遣った。


「とにかく展覧会を観に行こうぜ。それから旨い店でランチでも食べよう」


ころっと態度を変えて肩を抱く。
やめてよ…と体を押し退けると懲りずに手を握ってきた。


「ちょっと、馴れ馴れしい!」


「いいだろ、どうせジジイ達が納得しなかったら嫌でも結婚させられるんだ。ほら行くぞ。さっさと歩けよ」


ぐいぐいと引っ張るように先導される。

履き慣れない草履の鼻緒が親指と人差し指との間にくい込んでくる。


その痛みを堪えながら、知られたくもない過去を知り、聞かれたくもない声を聞いてる人に、私はすっかり弱味を握られた様な気分に陥ったーー。