ニヤつく彼に対して、決して行きたくて言うんじゃないんだから…と胸に誓って声を発した。


「展覧会にはお付き合いしますから、三千円ほど貸して下さい!」


でも、展覧会の代金は貴方の奢りで…と言うと、何故だ?と当然訊ねられる。

 
ここは恥を忍んで願わなくては。
そして、この借りたお金はお祖父ちゃんに支払わせよう。


「実はあの……お財布を持ち合わせてなくて……今日はカードもないから家にも帰れなくて困ってたの」


家に帰ったところで中に入る鍵すらも持ってないとは、流石にこの場では言えない。


「マジでか?」


キョトンとした顔のまま再確認される。
恥ずかしい気持ちを押し殺して、コクン…と首を縦に振った。


一瞬ポカンとした小早川さんは、それから急に笑い始めた。


「アッハッハッハ!…財布も持たないで外出してくるなんて、あんた、まるでガキみてえだな!」

 
声を立てて笑い、悔しい思いをしてる私の側に近付いて来た。


「いいよ。三千円と言わず、食事代も奢るからデートしよう。なんか俺、俄然あんたに興味湧いてきたし」