震えてきそうになる体に力を込めて、何とか持ち堪えようとする。

会長と彼の母親とは店の前で別れ、二人が乗った車をずっと先まで見送ったーーー。



頭を冷やしながら帰ろうと思い、駅に向いて歩き出してすぐ、路肩に止まった車のウインドウが開き、何となく中に目を向けると彼だった。


何も言わずに「乗れ」と言うので、その顔を確かめてから言うことを聞いた。
彼のお祖父さんが話してたことを直接本人に問い質してみようと思ったからだ。


『一路は貴女のことをよく知ってるようだし、そういう人の真髄を見極められる孫を持ち、ワシも自慢に思っております』


この人は私の何を知ってると言うんだろうか。

家族にも話せない秘密をただ知ってると言うだけではないのか。



「…ねえ、ゆっくり話が出来る所へ連れてって」


真っ直ぐ帰る訳にはいかない。
全てを彼に話してしまい、そして、彼が何を何処まで知ってるのかを聞き出さなければ。


彼は私の顔を見て、「分かった…」と一言声に出した。
前を見つめてる脳裏に、あの夜のことが思い浮かんでいた……。