…ジリ!バシッ…
朝6時半、週の始まり。

昨日の遊び疲れを少し残して気怠い体を起こす。
まだまだ冷える朝は布団から出ることすら嫌になるけど、何かと支度しなくちゃいけない。

寒さに身震いしながら暖かい布団から抜け出す。
近くに置いたままのカーディガンを羽織って音を立てないように寝室を出る。

暖房をつけてお弁当作り。
最初はすごく嫌だったお弁当作りも慣れてきた。
少し手を抜いて楽をしちゃう時はあるけど、ちゃんと“美味しい”と言ってもらえるように頑張って作ってる。
喜んでもらえることがこんなに嬉しいことだったなんて初めて知ったから。

お弁当作りが終わると朝ご飯の準備。
そしてそれが終わると月曜の朝一番の大仕事が待っている。

朝ご飯の用意をすると冷めてしまうからその前に寝室に入り、気持ち良さそうに寝ている顔を少しだけ眺め声を掛ける。

「おはよーう。朝ですよー」

声を掛けるだけで起きるなんて思ってないけど一応一度は声をかけてみる。
当然、反応はないから今度は頬を撫でてみたり、まつ毛長いなーとか見てみたりしながらイタズラ心で頬を引っ張ったり鼻をつまんだりして遊んでみる。

いつもはこれで苦しそうな顔をして嫌がるのに今日は何故か怖いくらいパッチリと目を開けた。

「うわっ!!」

本気でびっくりした私は後退りしてバクバクする心臓を両手で押さえた。

「起きてんだったらゆっくり目開けてよ…そんな勢いよく開けられたらホラーだよ」

朝から最悪だ、と思ってる私の心なんて知らずベッドの中の彼は真顔で私を見続けてる。
寝ぼけてんのかいつもの無表情なのかわからないし眠たいのかすらわからないけど動かないから近付いてみる。

「朝ご飯出来たから起きてきてよっ?!」

近付いた拍子に伸びてきた手に腕を掴まれてベッドの上に倒れこむ。
漫画のように綺麗に倒れるんじゃなくて、完全に彼の体の上に顔面を打つ感じ。
彼もだけど普通に痛い。

「…痛いんだけど」
「俺は朝から苦しいんだけどね」
「じゃあ起きてきてよ」
「やだよ」

やだよって子供じゃないんだから…と呆れながらも抱きしめられる腕を離せない私もしょうがない。

「起きないと仕事遅刻しますけど」
「・・・」
「それでなくてもギリギリなんですけど」
「・・・」

返事のない彼の腕を解いて彼を覗き、そして額にキスを落として「生徒の鑑が遅刻だなんて…」と言ってやる。
それが一番嫌な言葉だってわかってるけど本当に時間がおしてるから仕方ない。

「あー、仕事行きたくない」
「そんなこと言わないの」

ベッドから出た彼の背中を押して寝室を出る。

「ずっと日曜日でいいよ」
「なに高校生みたいなこと言ってんの」

私が笑うとまた嫌そうな顔をしたけど、今度はきちんとテーブルについた。

眠そうな顔をしながらテレビニュースを見て携帯を確認してから洗面所に向かう。
そんな彼を見ながら朝食を用意する朝。

長い一週間が始まり。



…end.