MOON WOLF

私は連れてこられた公衆トイレでひとしきり吐くと、愛斗に体を支えられながら高月の所に戻ってきた。

「ごめんね…」

二人に言った。

「大丈夫か?」

「うん、ありがとう」

高月の質問に力ない笑顔で答えた。

「…」

何も言えないのか無言になる高月。

ほんと、変なことになってごめん…

「俺、車で家行くから先帰ってろ」

そう言うと愛斗は電話をしだした。

高月は少し悔しそうだけど「わかった」と、言ってバイクをとばした。

電話を切り、愛斗は私を公衆トイレの前にあるベンチに座らせた。

そして隣に座り、私を抱き寄せた。

「愛斗…」

「ん?」

優しい声…

「あいとっ…」

「ん」

「あいとおっ…」

「ん」

車が来るまでずっと私は愛斗の名前を呼んだ。愛斗はそんな私にずっと優しく「ん」と、一言だけの返事をしてくれた。

私はただ愛斗の存在を確かめたかった。

愛斗が返事をしてくれるだけでとても安心ができた。

車の中でもずっと抱き寄せてくれていた愛斗。

私はそのぬくもりに安心しながらぼーっと窓の外を眺めていた。