「あの時は小耳に挟んだだけでも、相手が間違っていたのに、反論しない君を見て苛々した。意見があるならハッキリ言えよって。しかし、すぐに気づいた」
「自分の企画ではないから遠慮しているのだと」と優しい声で微笑んだ副社長の右手が、そっと頬に触れた。
「しかし良いものを作るためには、時に意見のぶつかり合いは避けて通れない。だから君は、何時まで経っても人を差し置いて前に出れないんだ。と先日も言いかけてしまったんだ」
そういえば、理不尽に責められ「補佐のくせに偉そうに意見するな」って、怒られたりしたこともあったっけ。
あの時の私を、副社長に見られていたなんて知らなかった。
「それでもめげず、見かける度どんな仕事にも一生懸命な君に、完全に心を奪われていたんだ」と甘く優しい声で告げられた。
私以外あり得ない、と強く思った副社長は。
以来、何度社長からお見合いを勧められても、頑なに断り続けていたことを教えてくれた。
「君以外、欲しくないんだ」と囁いた副社長の胸に顔を埋めた私は、密かに外堀を埋められてい
たことを告白された。
今回の仕事を私に任せ距離を縮め、口実を作り私を傍におこうとしたのだという。



