・キミ以外欲しくない

佳乃は私が倒れた時のことを話してくれた。
ふらついた私を咄嗟に庇い、身体を支えてくれたのは、副社長の隣に座っていた日高主任だったらしい。
朝から荷物運びまで手伝わせてしまったうえに、助けてもらうなんて。


「日高主任には迷惑かけちゃったな。皆の前でそんなことさせて、佳乃にも悪い事しちゃったね」

「それは別にいいのよ。ただね、その後がさ……」

「ん?」


言いかけた佳乃は、私の顔を覗き込み「愛されてるって、いいねぇ」なんて意味ありげに口にした。


「なにが? なにかあったの?」と、不思議そうに小首を傾ける私を、佳乃は「鈍感」と言って額にデコピンした。


日高主任の腕の中で、安心したように身体を預けていた私の姿を目の当たりにした副社長は、慌てたように「それは俺の役目だ」と日高主任の腕の中から私を奪い、当然のように抱き上げたというのだ。


「で、そのまま雪乃を連れ去っちゃったの。だから、必然的に会議はお開き。その後、社内では二人の噂で持ち切りだったのよ」

「……そうだった、の?」


どうしよう、また迷惑をかけちゃってる。
副社長に、なんと言って謝ればいいだろう。