ペコリと頭を下げる私に「頑張ろうな」「絶対に成功させよう」と励ましてくれる人達の中に、あの日高主任もいた。

副社長のひとことで、私は彼らの輪の中に入れてもらえたのだ。
同じ目標に向かっている仲間として、認めてもらえたことが嬉しかった。


ふと副社長の姿を探す。
しかし、会議室には既に副社長の姿はなく、佳乃に尋ねると少し前に部屋を出たと教えられた私は、思わず部屋を飛び出す。


廊下に出ると、少し先に副社長の後ろ姿が見えた。


「副社長! 待ってください」


自分でも驚く位に大声で呼び止め、廊下を駆けていた。
驚いているのは、副社長も同じの様で。
ビックリした顔のまま、駆け寄る私を見つめていた。


「まだ会議は終わっていないだろ? なにしに来たんだ」

「あの、あの。さっきは、庇って下さってありがとうございました」


副社長が庇ってくれなかったら、私の案は潰されていたはずだ。
それに副社長のおかげで、私は皆の輪の中にすんなり入れてもらえる事が出来たのだから。
感謝してもしきれない。


「君を庇ったつもりはない。思ったことを言ったまでだ。君も、自分の企画が採用されたんだから、自分の考えに自信を持て。誰かに何かを言われる度にヘコんだり意見を変えていたら、自分のやりたい仕事が出来なくなるぞ」