君は君のままで

「お前からそう言われると、寒気がするし吐き気がするんだが…」

「気持ち悪いんなら、トイレに行きな〜」

「お前、マジでうざいんだが…」

先程の殺気を消して、やがて光希は呆れた表情をして頭をボリボリと掻きながら雫の隣の席に座る。そして、次々と部下が終わった生徒達が教室に入ってくる。

担任の先生が来たのは、その数分後だった。担任はいつ通りに今日の日程を生徒達に伝える。日程のみ伝えられると思っていたが、どうやら今回は違った。

「今日から新しくこのクラスに入る生徒がいる。」

先生の一言に、生徒達はザワザワと少しずつ騒ぎ始める。この時期に転校してくるというのは珍しい。先生が入れっと教室の外…廊下に呼び掛ける。その呼び掛けに答えるように、ガラガラと扉が開かれる。

姿を見た生徒は、沈黙になる。それは何故かというと…。入ってきたのは、モデルをしているような整った顔に、少しばかり茶色が入っているショートの髪の毛で男子だった。

まさに、この世にいうイケメンというやつだ。彼の姿を見たクラスの女子は、キャー!っと騒ぎ始めた。突然の声だった為、雫は僅かに顔を歪める。

実は、雫はゲームセンターなどの大きな音が出る場所はとても苦手だった。だから、突然とこのように大きな声を出されてしまっては驚いてしまう。

雫の異変に気付いた光希は、こっそりと彼女に声を掛ける。

「雫、大丈夫か?」

「あ、うん…大丈夫。ありがとう」

光希の問い掛けに、微笑んで答える雫。雫と光希は、転校生の方を見る。先生は黒板に、保村 雪(やすむら ゆき)と書かれていた。

先生が雪に自己紹介をするように促し、彼は頷いて自己紹介をする。

「保村 雪です。この前まで父の仕事関係でアメリカにいました。アメリカ生活で慣れてしまっている為、日本生活の違いで少々皆さんにご迷惑を掛けると思いますが、よろしくお願いします」

雪は、クラスの生徒達に自己紹介をしペコリと頭を一度下げる。彼の笑顔はとても綺麗だった。その笑顔を見た女子達は、キャー!と声を上げるばかりだ。

その時、一瞬だけ雫と雪の目が合う。それにすぐ気付いた雫は雪にペコリと軽く頭を下げる。目線と合った雪は、口パクで雪によろしく…と動かす。

彼の席は、光希の前だった。その為、雫との距離は近かった。雪の自己紹介を済ませ、朝のホームルームは終了した。