君は君のままで

「おはよー!!」

突然と雫に声を掛けてくる人物がいた。勿論、ぼーっと外を眺めていた彼女は目を見開いて驚いた。雫に声を掛けてきたのは同じクラスの倉持 美奈(くらもち みな)。

「おはよ、美奈」

美奈も自分の鞄を机の横に掛ける。美奈の席は、雫の前だったのだ。美奈の笑顔は太陽みたいに輝いている。美奈は、吹奏楽部に入っていて、フルートを担当している。実は、雫も音楽関係はとても好きでピアノは弾ける。

しかし、雫は吹奏楽部に入らず弓道部に入ったのだ。雫と美奈は今日の朝練はどうだったか…という話をする。その時、ドタドタという慌ただしい足音が遠くから聞こえてくる。

そして、ガラガラ!と乱暴に教室の扉を開ける男子の姿があった。その人物は、少しばかり寝癖が付いていてショートヘアーの黒髪が特徴の清水 光希(しみず こうき)。

そして、ズカズカと教室に入って慌てた表情を浮かべながら、雫に向かって言った。

「雫!なんで起こしてくれなかった!?」

「…だって、私、部活あったし…。そろそろ、自分で起きれるようにしないとね」

そう、雫と光希は小さい頃からの幼馴染関係だった。家も隣同士なのだ。この話から分かる通りに、雫は毎朝光希を起こしていたのだ。

光希は朝が弱い為、起こさないと寝坊して遅刻になってしまうからだ。周りから見れば、雫はそこまでしなくてもいいだろう、とは思われているだろう。

「私のせいじゃないよ。自分で起きれるようにしてね。"こーちゃん"」

「し、雫っ!ここで、そんな風に呼ぶなよ!」

雫は、光希の事を小さい頃から"こーちゃん"と呼んでいた。"こーちゃん"と呼ばれるのがあまりにも恥ずかしかったのか、彼は顔を真っ赤にさせていた。

それを聞いていた美奈は、何か企んでいるような表情を浮かべて楽しそうな声で言った。

「随分、可愛らしい名前だね、こーちゃん!」

美奈が"こーちゃん"という部分を強調して言ってみては、光希は眉間に皺を寄せて物凄い嫌な表情を浮かべた。雰囲気は、ほぼ殺気を出してしまっている。