君の見ている世界は

むわあっ、と熱気が体中に染み渡る。

暑い。暑い暑い暑い。

なんで夏ってこんなに暑いんだろう。

なんで蝉はこんなにうるさいんだろう。

なんで汗がこんなに出るんだろう。

もう、もう今すぐ頭から冷水をかぶりたい。

だけど、今はその水さえ瞬殺でぬるくなってしまいそうなほどの暑さ。半端ない。

なるべく直射日光が当たらないように、日陰に入る。
しかし暑いのは変わらない。

「暑いねえ」
「運動部は大変だねえ」

またまた、遊ぶ約束などのくだらない話をしながら、自転車を家へと走らせる。

数分自転車を走らせてから手を振ってわかれた後、家までの道のりは結構長い。

少し不良ぶって、というかただただ暑いのもあり、ヘルメットのあごひもを外した。

シャッと音がして風を切るように自転車をこぐ。
肌にあたる風が生ぬるい。
田舎のこの街はどこかからか潮の匂いがする。

ぱっと、目の前を黒猫が通過した。

なにか悪いことでも起こるのかなぁ、とふと思った。
でもそれは交差点の話だっけな、とまた思う。

いいなあ猫は気ままで。
高校の心配なんてしたことないんだろうなあ。

額からこめかみに、汗が垂れた。
何故だか、さっきの猫の姿が脳裏に浮かんだ。

刹那

全てが合わさったかのように

わたしが進まなければならない道かのように

その道はあった。