君の見ている世界は

いけないいけない、と思いながらしわになった部分を手でのばす。

はあ、と呆けていると、もう帰宅してひとが少なくなった教室の扉から、見覚えのある人物が入ってきた。

「ゆずこ、帰ろう」

友達の川西希歩。
部活が一緒だったこともあり、3年間違うクラスだけどこうして一緒に帰るほど仲がいい。

食べ物などの趣味が合い、1番の友達だ、と私は思っている。私は。

「う、ごめん、まだなんにも用意してない。」

希歩は、嘘だろ、と言いたげな顔をしてから、私の前の席に座った。

「次やったら先帰るからね」
「す、すみません」

溜息をつきながらなんだかんだ待っててくれる彼女。
帰る準備をしている私を横目に、希歩は私の机の上にあった調査表を見ていた。

「あれ、ゆずこって南高じゃないの?」
「そのつもり」

わたしは希歩の手から調査表をとってぱんぱんのファイルの中に詰めた。

南高は、この中学校から1番近く、学科も2つある自転車で15分ほどの進学校だ。

偏差値もそこそこ高いことから、大半の子がそこに行きたがる。

希歩も私も入学を希望しているところだ。

「書かないの?」
「家帰ってから書くー」

「そっか」と呟くと、希歩は興味を無くしたように、自分の鞄の中身を確認している。

「よし、準備できたよ」
「帰ろ」