ガタン…ガタン…
変わらない、そう、いつもと何も変わらない風景。
始発の電車にのって、目の前には女子高生が居て、斜め前にはスーツをきたおじさんと、その横にパソコンを触る若いサラリーマン。
(つまんないな)
心の中でそう吐き捨てて目を閉じた。

ホントお前が居ない世界ってこうもつまらなかったんだな。

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俺は笹原 尚(ささはらなお)高校3年生。
俺は今、始発の電車に乗って、親友に会いにいくところなんだけど、とにかく、死にそうなほど眠い。
こんな眠い思いまでして始発の電車に乗って会いにいくのはちゃんと訳がある。
俺の親友は遠い病院に1人でいるから。

目的の駅について、寄り道もせず向かったのはこの県じゃ1番大きい『なつめ総合病院』って所。
何度も来てるけど、何度来ても慣れないし、真っ白な空間ってそんなに好きじゃないかし落ち着かない。
「あらナオくん。来たのね。アオくん起きてるわよ」
声をかけてくれたのはこの病院で一番長く勤めている看護師さんの河原さん。
俺はありがとうございますとだけ言って真っ白な部屋に入った。
「あ、ナオちゃん、いらっしゃい」
そこにはいつもと変わらない俺の親友、葉山 蒼(はやま あおい)がいた。
アオとは小学校低学年の時に出会った。どうやって仲良くなったのかは正直、覚えてないし、思い出せないんだけど…。
「ナオちゃんそんなとこでボーとしてないでこっち来たら?」
アオの声でハッとした。
たまに俺はこういう時がある。自分の世界ってゆうか…周りの声が聞こえてないとか。
俺は何も言わずアオの寝るベッドの横にある椅子に座った。
「なんか、ほんと毎日ごめんね」
「いや、こっちこそ平日はあんまり時間無くてごめん」
そう、俺は高校生になってから毎日アオに会いに来てる。
アオが心配とか、寂しくないようにとか、まぁそれもあるけど、俺はただ来たくて来てるって感じで、迷惑とか微塵も思ってないしむしろアオと喋ってる時間が楽しいと思う。
それに毎回の電車がつらいとか、全然思わない。
これが日常だから。