イヤな予感を感じたけど、とりあえずおはようと声をかけようとしたそのとき。



「君と愛の攻防戦…」

「は?」


がっしりと掴まれる右腕。

寝起きだというのに、その力は半端ない。


あたしが目を白黒させている間に、彼はベッドの上へとよじ登ってきた。


え……?

途端にさぁっと血の気がひくあたしをよそに、彼の顔があたしの首筋に埋められる。



ちょ、ちょちょ……っ!



「なななななな何すんの神代君!?」

「オフェンスー……」


オ、オフェンス!?


もごもごと意味不明なことを口走る彼。

そのたびに吐息が首筋にかかってぞわぞわとした感覚に襲われる。


あたしが逃げようとすると、身動きがとれないようぎゅっと抱きしめられた。



何このエロスな雰囲気!


朝っぱらからダメよ神代君!

こんなのはワタシたちにはまだ早いわ、って何キャラだよ自分!?


なんかもう意味わかんない!!!



どうしていいのかわからずに視線だけを慌ただしく泳がせると、必死に笑いを堪えているませガキの姿。

ちょ……っ、助けなさいよ!



「!?」


そのとき、あたしは硬直していた身をさらに固くした。


か、神代君……。

お願いだから服の中に手は入れないで!




「こんなのはやだぁぁぁぁ!!!!!」



大きく叫ぶと同時に、渾身の力を込めて神代君の体を押し返した。

ぐえっと何か潰れたような声を漏らしながら、どすんと彼の体が床に落ちた。


落ち着かない動悸をどうにか静めようと大きく深呼吸を繰り返す。



「……美加?」


しれっとした顔で神代君があたしを見ている。

まるで何が起こったのかわからないとでもいうように。


は?

と思いながら、未だに笑い続けているレイに説明を求めた。



「ははっ、まじウケる。ハルはかなり寝起き悪いから朝はいつもそんなだよ。ちなみに本人は何も覚えてねえだろうけど」




……な。

なんですとぉ!?


開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだと思った。