……しばらくして、あたしと彼の体がゆっくりと離れた。

彼がにこにことあたしを見つめている。


あたしはというと、彼の体温の余韻と羞恥心でそれどころじゃなかった。

離れても尚、どきどきとしている。


赤くなった顔をあんまりまじまじと見られたくないし、彼の顔も直視できない。


今彼と目が合えば、冗談ぬきで心臓が止まりそうだった。

ていうかむしろ鼻血出そう。


何てったって、あたしは今まで誰ともつきあったことがなかった。

万年片思いのロンリーガールだったのに、こんな突然の告白とハグはちょっとかなり難易度が高かったのだ。


彼があたしの肩に両手を置いているだけのこの状況にも、動悸が激しくなってくる。




「美加」



彼があたしの名前を呼んだ。

今まで男の子に下の名前を呼ばれたことなんてほとんどなかったあたしは、目を丸くして顔を上げた。


きらきらとした、男だというのに常に星がある彼の目。


しまった。

目を合わせてしまった!


途端にあたしの体温はぐぐっと急上昇。



「ま、ま、また明日ーーーーーっ!!!」




あたしは恥ずかしさのあまり、オリンピックの陸上競技選手さながらのスピードでその場から走り去ってしまった。


彼が何か言おうとしていたことなんて、気にもせずに。