「すき」

「はい?」


彼があまりにも平然と言うものだから、あたしは思わず聞き返してしまった。


「だから、好き」


淡々とした物言いで、そう答えられた。




……のどかな放課後の中庭。

まるでメロドラマのようなシチュエーションで、あたしは告白をされた。


しかもその相手は、あたしが密かに想いをよせていた人物。



神代春也。


茶色がかったふわふわの髪や、自由気ままな性格はどこか猫を彷彿とさせる。

少々不思議系なところはあるものの、そのバランスのとれた整った容姿と、たまに見せるときめきポイントの支持率は高く、そこそこの人気があった。



そんな彼が、あたしに告白をしている!


パニックになったあたしは目を見開いた。

まるで金魚のようにパクパクと口を動かすあたしを見て、彼は緩く笑った。


ずっきゅーん!!

そんな擬音が聞こえそうなほど、あたしの胸は高鳴った。


お、落ち着け自分。

とにもかくにも返事をするんだ。



「あ、あたしも好きっ」



その瞬間、あたしは温もりに包まれた。


数秒の間ののち、神代春也に抱きしめられていることに気が付いた。

ふわりと柑橘系の香りが漂う。


あたしの頬は一気に紅潮した。


て、展開早くないですか!?



あまりに急速で夢のような状況に、あたしは意味もなく絶叫したくなる衝動を覚えた。