「春也」


あたしがそう呼ぶと、神代君はゆっくりと顔を上げた。

その表情には不安を隠しきれていなかった。


あたしは神代君の手をとって笑う。


「春也のせいじゃないよ。あたし、好きって言ってもらえて嬉しかったもん」

「美加……」

「だからそんな顔しないで。ね?」


神代君はゆっくりと小さく頷いた。

それを見てあたしはほっとする。


俺のせいだからやっぱり別れよう、なんて言われたらそれこそ絶対に嫌だ。

あたしは、神代君が好きなんだから。



「決めた」


神代君は急にそう言って握り拳をつくった。


あたしはそんな神代君の横顔をじっと見つめた。

何を決めたんだろう?



「俺、美加のこと守る」



そう言って神代君はあたしの目をまっすぐに見つめてきた。

あたしはそれにまたきゅんとした。


守るよ、って。

神代君があたしのこと守るよって……。


ななななんかすっごい格好いいんだけど!


どきどきする心臓を落ち着かせつつ、あたしは照れながら笑った。



「うん!」




レイのことなんかそっちのけで、あたしと神代君は微笑み合った。


幽霊とか心霊現象なんかに負けてたまるか!

あたしと神代君の恋路はまだ始まったばっかりなんだから!





……なんて、そのときはまだ軽く考えていた。

それはあたしの思った以上に大変なことだったのに。