「日下部さんっ!」

日下部さんはデスクに座り、一人で仕事をしていた。

私は駆け寄った勢いでデスクを手のひらで思い切り叩き、怒られた。

「お前、うるさい!一体何なんだ!?」

「ねぇ日下部さん教えて下さい!」

今は日下部さん一人キリだから丁度良い。

思い切って、勢いのまま聞いてしまおう。

「日下部さんって何で香坂君を知ってたの?」

「………」

「ねぇってばっ!」

パソコン用のブルーライトカットの眼鏡をしながら仕事している日下部さん。

答えようとしないので、手を伸ばして外す。

「はぁっ…。教えたら、何かメリットある?」

渋々とパソコンを閉じて私の方を見てくれた。

「えと…飴ちゃんあげます」と言って、ポケットからフルーツのど飴を差し出したが却下。

「じゃあ何したら教えてくれるの?」

「…逆に聞くけど何してくれるの?」

真っ直ぐに目を見て話すから、私は咄嗟に目を反らした。

何してくれるの?って聞かれても困る。

「…社員食堂のランチ奢ります」
「却下」

「…じゃあランチに好きな物プラスします」
「却下」

「綾美と高橋さん連れて飲みに行きましょ。私持ちで!」
「却下」

思い付く事をことごとく却下されて、私は困り果てて苦し紛れに思いついた。

「…仕方ない!取って置きの切り札です!日下部さんの超怖い運転練習に付き合います!」

「超怖いって何だよ。まぁ、いいや、それで決まり」

「日下部さんに命預けるんですからね、何かあったら責任とってよね!」

「そうだな、責任とるよ」

「やだ、やっぱりやだ。責任取られるの怖い…」

根負けした様で日下部さんは笑ってる。