そうだった。

日下部さんちは私鉄の沿線だから、JRの改札口前を通った方が私鉄の改札口に近いんだった。

今日も会社付近の降り口の駅に集合解散としたから、送るって言われるのかな?

JRの改札口付近まで来ると、

「気をつけて、また明日」

と言って、頭を優しく撫でられて、2回ポンポンと軽く叩かれた。

あっ、今日は送るって言わないんだ・・・。

「お疲れ様でした。今日はありがとうございました」

ペコリッと軽くお辞儀をして、改札口を通り抜けてから手を振る。

私は後ろを振り向かずに進んだが、ホームへと向かう柵の隙間から日下部さんが見えた。

まだ見送っていたので、再度、手を振ったが気づいたのか、気づかない振りをしたのか、私鉄の改札口に向かって方向転換をした。

『送る』って言われなくて、物悲しく思う私は最低だ。

逆に『送る』って言われても、拒むくせに。

私は日下部さんが居なくなるのも嫌だし、かと言って異性として好きなの?と聞かれたら、有澄を思い出すだろう。

電車に揺られてモヤモヤした気持ちのまま、有澄にメッセージを送る。

駅に着いたら直ぐに、自宅まで歩きながら電話しよう。

電車に乗っている間は、ずっと有澄とメッセージ交換していた。

日下部さんの事を思い出さない様に───・・・・・・