「予算書も自分で作っても構わないんですけど…。綾美の方が正確で早いし、つい頼りにしちゃうんですよ、高橋さん」

日下部さんは無視して、高橋さんに話を振る。

「綾美さん、仕事出来そうですもんね」

「高橋、裏を返せば、今のは秋葉が仕事出来ないって言ってるのと同じだからな」

「そ、そんなつもりで言った訳じゃないですよ!」

「大丈夫、分かってます。日下部さんが意地悪言ってるだけですから…!」

本当に日下部さんは意地悪ばっかり言うんだから。

高橋さんに意地悪ばっかり言って、裏を返せば"小学生男子みたいに好きな人虐めてます"みたいなのは自分でしょ!

「あっ、何で私の飲むんですか?」

「ビールが飽きてきたから…」

「自分で頼んで下さい!」

届いたばかりの私のシークヮーサーサワーを勝手に飲んでしまうし、おまけに倒してこぼすし・・・日下部さんは何処か、おかしい。

「いつものハイスペック男子じゃないですね、日下部さん」

店員さんからお借りしたダスターで、テーブルを拭く。

残り少なかったから良かったものの、私の甘めなカクテルをこぼしたのでテーブルはベタベタになってしまった。

「…もう酔ってます?」

「…まだ酔ってない」

そんな会話をしつつ、テーブルを綺麗にする。

私達はもう少しだけ居酒屋に滞在し、21時には駅で解散した。

皆それぞれ違う沿線なのだが、綾美は高橋さんが家まで送ってくれるので私達は二人きり。

「今日は香坂君来ないの?」

ふと聞かれた一言にキョトンとする私。

「ま、まさかとは思いますが、こないだの忘年会の時に跡つけました?」

「被害妄想半端ないな…俺は私鉄だから、JRの改札前通らないと帰れないだけ」