ランチが終わり、店を出ると日下部さんが車を運転する事になった。

「私達は後ろに乗ります!」
「秋葉さんは助手席にどうぞ」

言われるがまま、助手席に乗せられた私はシートベルトを握りしめたまま、座っている。

日下部さんの運転がぎこちなくて怖いのだ。

免許取り立ての様な振る舞いの運転でハンドルはガッチリと握りしめているし、何でもスマートにこなす部長としての日下部さんは何処に行ってしまったのか・・・・・・?

このままの状態で高速は乗って欲しくない。

公道を走っているだけでも恐怖でフロントガラスからの景色をまともに見れない。

教習所の車に付いている先生用のブレーキが欲しい。

「日下部さんにも不得意があるんですね…」

「ずっとペーパードライバーだったから、こないだ教習所で練習させて貰ったんだけど…道路は仮免の時以来だから…」

「そ、そうですか…」

高橋さんに運転を代わってほしいよぉ。

何か良い案はないものか・・・と考える。

車内にはラジオの音だけが響いて、皆、しばし無言のままに時が過ぎる。

~♪~♬~

ラジオから好きなバンドの曲が流れて集中して聞いていたら・・・

ガタンッ、と音がした。

「だ、脱輪しませんでしたか?」

「端に寄りすぎたのか、縁石の三角の部分を踏んだかも?」

あぁ、もう嫌だ。

恐怖でしかない。

「た、高橋さん。運転代わってもらっていーですか?日下部さん、怖いです、限界です!人にぶつけてしまったら、取り返しがつきません!…そこのコンビニに停めて!」

「分かった…」

怒った訳ではないけれど、ついつい口調が強くなってしまったらしく、日下部さんはシュンとして落ち込んでいる様だ。